大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)2310号 判決
原告
鈴木信忠
代理人
伊藤秀一
被告
松竹タクシー株式会社
外三名
代理人
阪口春男
外一名
主文
被告らは各自原告に対し金二、〇八四、一九〇円及び内金一、九〇四、一九〇円に対する昭和四四年五月二四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。訴訟費用は三分しその二を原告の負担としその余を被告らの負担とする。
この判決は第一項に限り仮に執行することができる。但し被告らが各一二〇万円の担保を供するときはその被告は右仮執行を免れることができる。
事実
〈前略〉
(八) 衣服及び装飾品の損害
一〇二、八五〇円
防寒コート(三五、〇〇〇円)、背広上下(二六、〇〇〇円)、カッターシャツ(二、二〇〇円)、下着一式(二、五〇〇円)、靴下(三五〇円)、ネクタイ(一、〇〇〇円)が汚損し、ネクタイピン(一三、〇〇〇円)、カフスボタン(三、〇〇〇円)、時計(一一、〇〇〇円)、万年筆(三、〇〇〇円)、防寒手袋(一、八〇〇円)、皮靴(四、〇〇〇円)が紛失した。
〈後略〉
理由
請求の原因第一項、第二項の事実は被告大阪トヨタの保有関係の点を除き全部当事者間に争いがなく、〈証拠〉を綜合すれば、事故当時被告松尾は被告大阪トヨタの茨木営業所販売係長として勤務し、乙車を所有して(車検上は被告大阪トヨタ所有とも窺われるが、この点は被告松尾所有として当時者間に争いがないので特に判断を加えない。)通勤用に使用(勤務先同僚の送迎用にも常用していた)し、またその職務であるセールスマンとしての業務用にも常にこれを使用していること、これに対しては被告大阪トヨタからガソリン代、出張手当等の名目では特に支給されず、交通費として月額三、〇〇〇円及び販売手当(出来高による)を支給されていること、当日は被告大阪トヨタの寮(守口市大久保)に用事で行き、その帰途同僚の訴外山本幸宏を同乗(自宅に送り届ける)させて運転中本件事故を惹起したことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、右事実によれば乙車は被告大阪トヨタの業務用(セールス用)にも使用されてその利益を享受し、セールスマンとしての被告松尾の雇用上の監督を通じてこれに対する運行支配をも及ぼしていたものというべきであるから、被告大阪トヨタは運行供用者乃至使用者としての責任を免れることができないものというべく、そうすると被告両会社及び被告松尾は自賠法第三条(事故当時着用の衣服等の損傷についても同条による責任の範囲内のものと解して差支えないものと考えられる)により、被告岡本は民法第七〇九条により、それぞれ連帯して本件事故により生じた原告の損害を賠償すべき義務を負うものといわなければならない。(因みに甲車、乙車間の過失割合は証拠によれば概ね前者四五対後者五五と認めることが相当であろう。)
〈中略〉
(八) 衣服及びその附属品の損害
六一、七一〇円
原告主張のとおり汚損(効用喪失)もしくは紛失した(事故態様に照し十分あり得ることである)が、その主張の価額はすべて購入値であつてその購入時期は多く昭和四一乃至四二年頃であり古いものは昭和四〇年のものもあり、時価相当として被告に賠償せしめることを相当とする範囲はこのうち概ね六割相当額と認めるべきであるから
102,850円×0.6=61,710円
となる。〈中略〉
そして被告らの主張するとおりの金員が支払済であることは当事者間に争いがないが、本訴請求(前記認定)費目と対照しいずれも請求外のものであることは明らかであるからこれらを控除することはできず、そうすると被告らは連帯して右合計額及びこれに対する原告の主張の趣旨のとおりの遅延損害金を支払うべき義務を負うものというべく、原告の本訴請求は右の限度で理由があるのでこれを認容しその余を失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条、仮執行及びその免脱の宣言について同法第一九六条を適用し、よつて主文のとおり判決する(寺本嘉弘)